室長はなにをする人ぞ
今までは男性からの飲みの誘いを断るほうだったのに。
十歳以上も年上の上司と、ささやかでも達成感を祝いたい、と思うなんて。

わたし…どうしちゃったんだろう?

とはいえそんな気持ちを彼に表現できるわけもなく、その金曜日は予定通り友達の真紀と二人飲みだった。

「美緒、どうしたの、なんか嬉しそうだよ。恋でもしてるの?」
付き合いの長い真紀は、やっぱりめざとい。

「んー、恋っていうか、異動先の上司が素敵な人で」

わたしは新しい業務のことや五嶋さんの人となり、仕事ぶりを真紀に話して聞かせた。
なるべくかいつまんで、と思ってもつい熱が入ってしまうのが、自分でも分かる。

「んー、素敵なおじさまってことか」
聞き終えた真紀は、どう反応すべきか迷う表情を浮かべている。

「おじさま、っていうか」
わたしは首をかしげて、大人の男性だよ、と言った。
「それこそ全然ガツガツしてなくて」
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