室長はなにをする人ぞ
遠慮すんなって、と得意げに笑ってようやく神谷さんは離れていった。

休憩しているのに、どっと疲れてしまった。
すみません、と向かいに座っている五嶋さんに小さく詫びて、大福の残りを口に押しこむ。

大変だな、ぼそっと五嶋さんがつぶやいた。
揶揄や同情といったものではない。どこか共感の響きが感じられた。

こんなことを男性の上司に言うべきじゃないのは分かっている。
ただ今は、気持ちを吐き出してしまいたいという欲求に、抗うことができなかった。

「…ああいう人ばかり寄ってくるんです」
固い声で口を解いてしまうと、あとは言葉があふれるままだった。

「べ、べつにわたしじゃなくても誰でも、自分の好みのタイプだったらちょっかいを出すし、彼女がいてもお構いなしで。
なぜか幼くて扱いやすい女の子だと勝手に期待されて。
わたしが実際なにを考えているのか、なにを好きなのかなんて、どうでもいいんです」

自分で自分の傷口をえぐって、当たり前だけど痛みをおぼえる。
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