室長はなにをする人ぞ

俯いていると、「人は見た目に惑わされやすい」という五嶋さんの言葉に顔を上げて彼を見つめる。

「特に男性は視覚情報に依存する傾向にある」
感情を排した口調だった。

「視覚情報に依存…」
ぼんやりと繰り返す。

「昨今こういう話題は控えたほうがいいんだろうけど、容姿が人に与える印象の分析だと思って聞いてほしい」

慎重に言葉を選んで伝えようとしてくれる五嶋さんに、わたしは素直にうなずくことができた。

早川さんは、と小さく間を置いて。
「顔の輪郭が丸くて、目は大きくいわゆるタレ目。目と目のあいだはちょっと離れている。
鼻と口は小づくりで、上唇はふっくらと開き気味で、下唇がしっかり結ばれている。
おおかたの男性はそんな女性を見ると、おっとりした性格でスキがあり、瞳は好奇心に満ちてこちらを見つめている。
上唇を誘うように開けていながら、下唇は閉じているから口が固い、という実に都合のいい女性像を描くんだ。
小柄だけどカーブのある体型も、そんな妄想に拍車をかける」