室長はなにをする人ぞ

雰囲気が良く飲み物も美味しい。
五嶋さんが使うだけあって、素敵なカフェだ。

「このBGM、いい曲ですね」
天井のスピーカーに指を向けて、思わず口にした。洋楽にはうといけど、どこかで耳にしたことがあるようなナンバーだ。

「Quien(キエン) sera(セラ)。ラテン音楽のスタンダード・ナンバーだな。
英語版のタイトルは『Sway』で、いろんな歌手がカバーしてる」

「五嶋さん、なんでも知ってるんですね」

たまたまだよ、と彼が小さく笑う。
「マイケル・ブーブレがカバーした英語版がメジャーだけど、個人的にはジョイス・モレーノが歌うボサノヴァ調のバージョンが好きだな」

「へえー、ちなみにどんな歌詞なんですか？」
BGMで流れているのは英語だけど、残念ながらほとんど歌詞が聞き取れない。

———Only you have that magic technique
　　　When we sway I go weak

曲に合わせて、五嶋さんが小さくハミングする。