室長はなにをする人ぞ
五嶋さんを真ん中に、両隣にわたしと夏目さんが腰を下ろした。

玲美さんがわたしたちにお茶を出して、向かいにかける。

ありがとうございます、と五嶋さんがお茶を一口啜り、わたしも倣った。

「当社の調査室の室長を務めております五嶋と、アシスタントの早川です」
夏目さんに紹介され、腰を下ろしたまま二人で頭を下げる。

「五嶋と申します。本日は貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございます」

いえいえ、と玲美さんは恐縮した様子だ。
「こちらのつまらない相談を、親身に調べていただいて、本当にありがたいといいますか…」

彼女の肩越しに、壁を背に置かれたチェストが目に入る。
飾られた写真立ての写真に、さりげなく目を走らせる。

どこかに旅行に行ったときに撮ったのだろうか。
レストランのテラス席で、玲美さんと、同じような年の頃の眼鏡をかけた男性が写っている。
柔らかな笑顔を向けている玲美さんと対照的に、男性の口元はぎこちなく結ばれている。
あの実直そうな方が、泉宏一さんなのか。
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