青色交差点
「あっああ、えっと、体調大丈夫?あんまり良くないって言ってたよね?」

「あぁ、子どもの頃からの持病っていうか体質って感じだから大丈夫。仕事も出来てるし。」

「そっか。よかった。」

「そうだ。中1のスキー教室の学習発表の頃もそれが原因で休んでたんだ。あの頃は成長期で体も不安定だったからか体質が強く出ちゃって。」

「そうだったんだ。」

「日下部さんが俺の分調べてまとめてくれたんだよね。字見てわかったのにお礼言えなくてごめん。あの時はありがとう。何十年も経ってからのお礼で申し訳ないけど。」

「ううん。それに何十年も、は経ってない。」

日下部さんがふふっと笑い『そうだね。』と笑い返す。

───ああ、これからもこんな柔らかい時間を一緒に過ごしていけたらいいな。

ずっと好きだった女性と二人きりで話している。住み慣れた部屋なのに今ここに流れている空気は驚くほど甘美なもので、舌の上でほろほろと溶けてしまうスノーボールクッキーのようだった。こんな幸せを味わえるのは今日だけかもしれない・・・などと弱気に思っているとインターホンが鳴った。デリバリーが届いたようだ。
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