島津くんしっかりしてください
「あ。ほらみて。二人合流したみたいだよ」






そう先輩が指差す方向には、島津くんと鞠亜さんがいて。






「ごめんね陽くん! 遅れちゃったあ! 昨日夜遅くまでレポート課題終わらなくてっ……寝坊……!」




「だ、だ丈夫だよ。鞠姉。俺より鞠姉の方が大丈夫じゃなさそうだけど……」






ぜぇっ、ぜぇっと肩で息をして大粒の汗を流す鞠亜さんに、島津くんが慌ててハンカチを差し出す。






「あ、りがと……っふー! よし! 回復ぅ!」




「うぉえっ⁉」







ばっと勢いよく上半身を起こし、鞠亜さんは満面の笑みを島津くんに向けた。







「いやーごめんね? 遅れた挙句迷惑かけちゃってさー? 運動不足だねー困ったもんだねー」






それからポンっと島津くんの肩に手をのせる。






「流石陽くん! 即座にハンカチを差し出すなんてどこぞのヒロインですか! 女子力高いねぇ」




「え”」



「じょ……し、りょく……っ」






思わず固まる島津くんと、こらえきれずに吹き出す鹿島先輩。






私はというと、呆れたようにため息を一つ落とした。






「確かに台風みたい……いや、おおらかな鞠亜さんと、繊細な島津くん……。考えてみれば、島津くんがヒロインだと言われても違和感ないですね」





「冷静な分析やめて……っ腹痛ぇ……っ!!」








げらげらとひとしきり笑い終わった後、鹿島先輩はふーっと大きく息を吐いた。







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