島津くんしっかりしてください
「……あ。もしかして、鞠亜さんから、私と島津くんが付き合ってるとでも言われたんですか? 違いますからね」



「わかってるよーてか、そんなの聞いても信じないし……じゃなくて」



「?」






ますます言いたいことがわからなくて、きょとんと首を傾げる。






「誠ちゃん、陽平のこと好きなんじゃないの?」



「……は」






思いがけない言葉に目を見開き、言葉を漏らす。






「私が……島津くんの事が、好き……? どうして、そんなこと」



「だって、陽平には素を出せるんでしょ。裏表のある人間が裏の顔を見せるって、それなりの好意が必要じゃん。わかるよ、俺もそうだから」




「でも……だから、それは恋とは」



「まぁ、どうでもいいけどね~」



「っ……!」






飄々とした様子に頭に血が上って、ガタンと勢いよく席を立つ。






「……気分が悪いので、失礼します。今日はありがとうございました」






吐き捨てるようにそう言って、すぐさま店を飛び出した。






私が、島津くんを好き……?






そんなわけが、ない。






そんなことがあり得るわけが……。















『好きって気持ちは理屈じゃないのよ。一度知ってしまったらもう、手遅れなの』















「……―っ!」






眩暈が、する。





気持ち悪い。






口内に胃液の味が広がって、思わず手で抑えた。






足元がぐらぐらと揺れているような感覚にまともに歩けなくなって、その場にしゃがみ込む。






指先はすっかり熱を失っていて、私はようやく動揺をしていたことに気が付いた。






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