島津くんしっかりしてください

「どうしてですか？」



「この前陽平と会ったんだけどさ～。な～んかぼーっとしてんだよね。まぁ、それはいつものことっちゃそうなんだけど……。でも、鞠亜はあのデート以来あってないはずだし。それじゃあ誠ちゃんかなって」




「……あはは、鋭いですね」






鹿島先輩には隠さなくてもいいだろう。






私は視線を地面に伏せると、短く息を吐いた。






「別に、喧嘩とかじゃないです、けど」



「けど？」



「……そもそも無茶だったんですよ。私と島津くんが仲良くするなんて」



「……どうして？」



「いつも綺麗に取り繕って本音を出しもしない汚い私は、島津くんと釣り合わないどころか、正反対ですから」



「……ふーん」






言い切ると、鹿島先輩は少し考え込んで、こちらに視線をやった。











「誠ちゃん。それは『やっぱり私には先輩しかいないです♡』っていう猛烈なアピールとみなしておけ？」



「違います」



「即答ー」






真剣な顔して何言ってんだと横目で睨みつけると、鹿島先輩はこちらに向き直り、楽しそうに笑う。











「でもさ。誠ちゃん。世界に自分と全く同じ人なんてどこにもいないよ～？」



「……知ってます」



「だけど、皆友達を作れている。例えば、正反対な性格なのにめちゃくちゃ仲がいい人とかね。誠ちゃんもそういう友達いるんじゃない？」




「……」



「結局必要なのは自分が、相手と仲良くしたいって気持ちなんだよ。性格の不一致とか関係なく」



「……」






少し、嘘をついた。






私が島津くんと仲良くしたくないのは、性格とか、そういうのじゃなくて。





ただ、自分の気持ちがかき乱されるのが嫌で。







鹿島先輩に見抜かれてしまった。






……ほんと、なんでこの人は。






少し悔しくて、呻くように呟く。






「珍しく先輩らしい発言ですね」



「お？　なになに～、大人っぽい鹿島先輩に惚れちゃった？」



「いえ、全く」



「即答ー」






からからと笑う先輩からそっと目をそらして、心の中で呟いた。






好きではないです。


だけど、尊敬はしてます。






そんな本音を心の中にそっとしまって。






自然に笑えている。






……あぁ。やっぱり、先輩の横は楽だ。






直接言ったら調子に乗りそうで嫌だから言わないけど。