島津くんしっかりしてください
いつの間にか人がそろったようで、委員会会議が始まる。






私は何をするでもなく、ぼーっとしたまま鹿島先輩の話を聞いていて。






「……真見さん」



「……ぇ」






隣から声をかけられて、びくんと肩が反応した。






聞き間違いかと思ったけど、違う。






視線を横にずらすと、そこには困ったような顔をした島津くんが立っていて。






……島津くんの声、久しぶりに聞いた。






なんて、呑気なことを考えていた。






「俺たちは文化祭まで校内に設置するモニュメントの制作だって。移動しよ」



「あぁ……うん。わかった」






小さく頷いて、島津くんの背を追う。






移動先の教室ではもうすでに数人、作業を始めていて。







「私はなにをすればいいの?」



「俺がモニュメントを組み立てるから、それに色を塗ってほしい」



「わかった」






仕事内容を聞き、すぐに作業へ取り掛かる。






机には色見本も置いてあったので、その通りに筆を動かす。






単純で、簡単な作業だ。






夏休みに学校に来るとか面倒臭いと思ってたけど……意外と楽しいかも。






ペタペタとベニヤ板をカラフルに染めていく。






夢中で作業していると、すぐにペンキがなくなってしまって。






補充しようと立ち上がりかけて、驚きで肩がぴくりと反応した。







隣で作業していた男の子が、身を乗り出してこちらを凝視していた。






私、というより、モニュメントを。








「すげー丁寧! 綺麗! 先輩器用っすね!」



「え、あ……はい」






屈託のない笑顔に、困惑しつつ頷いた。



大きく開かれた口からちらりと八重歯がのぞく。






先輩……ってことは、後輩か。






やばい、さっき自己紹介してた気がするけど、名前……なんだっけ。






とりあえず後輩くんとでも呼ぼう。






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