島津くんしっかりしてください
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それから時間は一気に過ぎて。






忙しかった文化祭実行委員会の仕事も今日で終わりだ。






私は正直、委員会に取り組むという気分ではなかったけど、心を無にして何とかやり切った。






そんな最終日を終え、委員会が解散しようとしたその時。






突如として鹿島先輩が、皆に声をかけて、引き留めた。






「あーちょっと待って。みんなに話があるんだ」



「え?」






何事だとざわめく委員のメンバーに、鹿島先輩はん”んと咳ばらいを一つ漏らし、明るい笑顔を浮かべた。






「あのさ、皆で夏祭りいかない? お疲れ様会ってことでさ」






にっこりと、優等生スマイル。






私は、急にそんなことを言い出した先輩に嫌な予感を覚えて、警戒をする。






この気分で夏祭りとか、行けるわけがない。






なのにどうして……何か、企んでいる?






返事を渋っていると、後輩くんがぱぁっと表情を明るくして、片手をあげた。






「行きたいっす! 俺、夏祭りとか大好きっす!」






おい、後輩。


そんな言い方したら……。





予想通り、その声を皮切りに、周りにも賛成派が増えていく。






あっという間にそう言った雰囲気が伝染していってしまって。






鹿島先輩がこちらに笑いかける。






「島津と真見さんも、行くよね?」






やっぱりこういうことだよなぁぁあ……。






なんかデジャビュ……。






内心顔をしかめて、大きなため息をついた。









鹿島、謀ったな鹿島!






なんて、どこぞのキャラの台詞が脳内にちらつく。






心の中とはいえ、先輩を呼び捨てにしてしまった。






「もちろんです~お誘いしていただけて、とっても嬉しいです~」






感情の乗らない間延びした声に、張り付けた笑み。






他の委員会メンバーにはバレていないだろうけど、島津くんと先輩には怒りが伝わっているだろう。






横に立っていた島津くんはぶるりと身を震わせると、小さく頷いた。






「……う、うん。いいと思う」






全員の返事が出そろって、着々と計画が詰められていく。






私はその様子を外から眺めて、それから地面に目を伏せた。






正直鹿島先輩の思惑はわからないけど……とりあえず乗ってみるしかない。






先輩なら、変なことにはならないはずだから……と、思いかけて、ふと気が付く。
















……どうして、私は先輩をこんなにも信頼しているんだろうか。






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