島津くんしっかりしてください
……気まずいな。






なんで私、声をかけてしまったんだろう。

学校でのキャラに合わせるため?






……それもそうだけど。






本当に私は何がしたいんだろうか。






ふ、と息をついた、時。






「……あー! 下手! 何回失敗したら気が済むのー?」



「だって射的なんてやったことないんだぞ、仕方ないだろー!」






そんな声が耳を刺して。






そちらに視線を向けると、委員会の後輩が何やらもめていて。






どうやら、女の子が射的の景品であるぬいぐるみをほしがり、男の子が取ってあげようとしたけどなかなかうまくいかないみたいな、そんな状況らしい。








……そんなに難しいのだろうか。






少し興味がわいてきて、試してみる。





お金を払い、弾を受け取って、銃にセットする。






よく狙って、狙って、引き金を引いた。









ぱん






軽い衝撃音とともに銃口から弾が発砲して、クマのぬいぐるみに当たる。






ぽす、と柔らかい音を響かせて棚から落ちたぬいぐるみ。







それを拾い上げて、店主のおじさんに声をかけた。






「あの、これって貰ってもいいんですよね?」



「ねーちゃんすごいな、一発で当てるなんて! 才能あるんじゃねぇか!」



「いえ、たまたまですよ」






大袈裟な物言いに、苦笑を漏らす。






本当にたまたまだ。






何気なく銃を構えて、引き金を引いただけ。



ただ、それだけ。






シンプルでわかりやすい。



……人間もこんな風だったら、苦労しないのに。





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