島津くんしっかりしてください
協力、ねぇ……。






少し考えて、私は島津くんに笑顔を向けた。









「ごめん、島津くん。協力はできない。そもそも私付き合った経験とかないし、他の人に相談乗ってもらった方がいいと思う」



「え、でも俺は……」



「ごめんね」






再度念を押すように断ると立ち上がり、パンパンと服に着いた汚れを払った。






立ちあがった途端に黒髪が肩からさらりと音を立てて滑り落ちる。



勝色の瞳を薄く細めて、笑顔を作った。






「もう仕事終わったし、私帰るね。お疲れ様」



「……うん、お疲れ」







どこか納得していないような顔の島津くんを置いて、私は資料室を後にした。















『俺の片思いだよ……ずっと、好きな人がいるんだ』







……相談する相手、間違えてるよ。島津くん。






島津くんが幼馴染さんの話をするときはどことなく嬉しそうで。恋をしていることが楽しくて仕方がないと言わんばかりで。













……でも、恋って、本当に幸せなものなのだろうか。










私はそう思えない。







恋なんてつらいだけで、救いなんてないと、そう、どうしても考えてしまうのだ。











『誠ちゃん……私、あの人の事まだ好きなのよ。ごめんね……』








っ……!





切なげな笑みがちらりと脳裏を駆けて、口元を押さえた。





どくどくと手の下を流れる血液が変な音を立てて暴れ出す。





くらりと眩暈がして、唇を噛み締めた。








……馬鹿みたい。謝るくらいなら、やめればいいのに。





< 15 / 372 >

この作品をシェア

pagetop