島津くんしっかりしてください
それから4年後。






父は雇っていた家政婦の女性と、結婚をした。






それが今のお母さんだ。






最初はよかった。






あいつは家によく帰ってくるようになったし、家政婦さんも、本当のお母さんだとはどうしても思えなかったけど、いい人だったと思った。









歯車が狂い始めたのは、妹が生まれた頃からだった。






小さくて、ふわふわとしていて。






少しでも力を入れたら壊れてしまいそうなほど儚く見えて。






「誠ちゃんの妹よ。仲よくしてあげてね」






そう言われて、伸ばした手を、琴音がきゅとつかんでくれた日の事は今背も鮮明に覚えている。











でも、幸せな日々はずっと続くものではなくて。







再び父が家に寄り付かなくなった。







育児に、家事に、仕事に、と忙しく働きまわるお母さんは、どんどん疲れていって。













このままではママと同じように、この人も倒れてしまう。







そんな思いが心の中に浮かんできた私は、お母さんに言ったことがある。


















「お母さん。パパと離婚しないの?」



「え?」






きょとんとした顔で、瞬きを繰り返すお母さん。






その目の下には濃いクマが浮かんでいて。






居ても立ってもいられなくなって、私は必死に言葉を選ぶ。






「お父さんはもう家に帰ってこないよ。このままお母さん捨てられちゃうよ」



「……そうねぇ。そうかもしれないわね~」



「っ……それがわかってるのに、なんで離婚しないの⁉ このままじゃお母さん倒れちゃうよ! 早く離婚して、慰謝料を貰った方が、」




「誠ちゃん」







感情的に叫ぶ私の名を、お母さんは優しく呼んで、頬を撫でる。






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