島津くんしっかりしてください
「誠ちゃん……私、あの人のことまだ好きなのよ。ごめんね……」



「っ……!」



「誠ちゃんが私を心配してくれているのはわかってるわ~。でもね、好きだから、愛されてなくてもいいって。そばにいられるだけで、幸せだって」




「お、かあさん……」



「好きって気持ちは理屈じゃないのよ。一度知ってしまったらもう手遅れなの」






そう微笑む表情の柔らかさが。






それに比例する手の平の暖かさが、私には理解することが出来なかった。















どう考えたって、正しいのは私の方で。






合理的に考えたら、間違っているのはお母さんのほうなのに。






どうして。



















どうして、そんなに幸せそうな顔をしているの















わからない。……怖い。








人が変わったかのように嘲るママも。






好きだからと言ってパパを許すお母さんも。










恋、なんてきれいごとで人が狂ってしまう瞬間も。












全部、怖い。



気持ち悪い、吐き気がする。
















お母さんとパパが離婚をしたのは、それから数カ月後のことだった。






別れを切り出したのは、パパの方だった。
















どちらの親について行くかを決める時。


私は迷わずにお母さんを選んだ。











今までだったら、間違いなくパパを選んでいただろう。






どちらがいいというわけではない。







いくら嫌いだとはいえ、経済的に裕福なのは父親の方だから、という理由だ。
















それでもお母さんを選んだのは、守りたい人がいたからで。















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