島津くんしっかりしてください
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「私は、一生恋なんてできない。人を好きになるメリットよりも先にデメリットを考えてしまうから」



「……」




「私が、全部悪いの。私が、あいつに似ていたからママは苦痛だった。私があの時もっと強く言っていたら今より状況はマシだったかもしれない」






話終わるなり、黙り込んでしまった島津くんに視線を移した。






「これで満足? だったらもう帰るけど」






立ち上がりかけた腕を掴まれて、強く引き戻される。






バランスを崩して座り込むと、背中に腕を回して強く抱きしめられた。








どくんと、大きく脈打つ心臓。




それを認めたくなくて、私は唇を噛み締めた。







「……慰めのつもり?」



「……」



「同情なら、やめてよ」







そんなことされたら、自分が惨めで仕方なくなってしまう。



私は惨めな子なんかじゃないと、私だけは信じているから。










「ねぇ、やめてって……」



「……真見さんは、悪くないよ」



「っ……」






言ってるでしょ、そう続くつもりだった息の塊が、音にならずにひゅっと溶けた。









「何も、悪くない」






ぎゅっと力が込められた腕は微かに震えていて。






ぎゅっと、心臓が握り潰されたかのような、痛み。









「……私が、悪いよ。何もできなかった」



「真見さんは、お母さんをちゃんと笑顔にしていたじゃないか。確かに真見さんを見ることで辛い思いをしていたかもしれない。……だけど、それ以上に楽しかったんだよ」





「楽しい……? お母さんが?」



「そうだよ。真見さんはどうなの? お母さんとの思い出は辛いだけのものだった?」



「……。……ううん」






そんなことは、ない。






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