島津くんしっかりしてください
お母さんとの思い出はいつだって暖かくて、陽の香りに包まれていて。






冷たさなんて、微塵もなくて。






「……でも、それも全部偽物だった。お母さんが無理をして作り出した、偽物」



「それは違うよ」



「……違わないよ」



「違うよ」






再び強く言うと、背中を撫でてくれる。







「じゃあさ、真見さんは嫌いな相手に優しくして、ずっと笑顔を作って取り繕うことってできる?」



「え……」



「本当に苦手な相手と楽しい思い出なんて作れる? 嫌いな相手を楽しませようとできる?」



「……でき、ない」






目頭が熱くなって、島津くんの首筋に顔を埋めた。






「真見さんのお母さんはちゃんと真見さんの事を好きだったんだよ。自分が憎んでいる人にどんだけ似ていても、真見さんのことを嫌うなんて、できなかったんじゃないかな」




「っ……でも……っ私、何もできなくて……」



「一緒にいたでしょ。辛い時にそばにいてくれる人って、特別で、大切だよ」




「でもっ、でも……私は、お母さんだけじゃなくて、二度も家族を壊しちゃって……」




「それこそ真見さんは何も悪くないよ。琴音ちゃんを守ろうとしたんでしょ? それでもこの道を選択したのは琴音ちゃんのお母さんだし、それに……」




「え……?」










「今、琴音ちゃんを助けてるのは絶対真見さんだよ。じゃなきゃ琴音ちゃんはあんなに懐かないだろうし、真見さんが俺に初めて怒ったのも琴音ちゃんのためだったしね。真見さんは頑張ってるよ」




「……ぅ、ふ……ぅく、ぅう……っ」











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