島津くんしっかりしてください
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その夜。






島津くんの部屋を訪ねた私はふと問いかけた。








「ねぇ、島津くん。どうしてあんなこと言ったの?」



「んー?」



「どうして、接客をしたいなんて言ったの?」







じっと見つめると、島津くんはベッドに上半身を沈めたままこちらをちらりと見つめる。









「えと……変わりたかったから、かな」



「変わりたい?」







「俺、鞠姉のことが好きだなんて言っといて、何も行動してなかったかなって……気が付いて。それで、自分ができることなら、挑戦しなきゃって、思ったんだ」









はにかみながらそういう島津くん。









私は少しの間目を見開いて、それからふ、と唇の端に笑みをのせた。






「……いいんじゃないかな。そういう考え方。島津くんに接客ができるかは別だけど」



「うっ。頑張りまーす……」






へらりと、力の抜けた笑み。






……うん。それでいて。






幸せそうに笑っていてくれたら、それで私は満足だから。







チクリと胸の奥を刺す鈍い痛みは、笑顔でふさぎ込んで、知らないふりをした。









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