島津くんしっかりしてください
「ぇえっと……島津くん。な、なに……?」



「……お化粧してるの?」



「えっ……?」






まじまじと見つめられて、声がひっくり返る。






「え、……あ。うん、加奈子と佐藤さんにやってもらったの」



「へぇ……」






なお手を放そうとしない島津くんに、私はむぐ、と口を噤んだ。








え、と……。



どうすれば、手を放してもらえるだろうか。






考えようとしても、うまく…考えが、まとまらない。







「……メイド服、いいね」



「っ、え」



「真見さんに、似合ってると思う」



「……っ」






その刹那






島津くんがほのかに笑った。






いつもの無邪気な笑顔じゃない。






凍てついた土地に咲く薔薇が綻ぶような。





美しい笑顔に、一瞬で目を奪われる。






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