島津くんしっかりしてください
目を見開いてこちらを凝視したまま固まっている島津くん。





目がまん丸になっていて、思わず吹き出してしまった。






「間抜け面」






あの時見たいに額をコツと軽く突き、笑いながら立ち上がった。















「さ、そろそろ帰ろ。ジュースも買わないとだし」



「……」



「島津くん?」




「……ぁっ、う、うん。帰ろうかな」









不自然に引き攣った表情に、首を傾げる。






めずらしいな、島津くんが作り笑いをするなんて。






そんなのやったって、バレバレで意味ないのに。






でも、そうせざるを得ない理由が何かあるんだろう。









とくに突っ込まないでおこう。







そう結論付けて、プリーツスカートの裾をパンパンとはたいた。









土のかけらが、夕日に照らされてキラキラと輝きを帯びる。






……あっという間だったな。






ちらり、と島津くんを横目で見つめる。
















……これで、今日きりで、この想いは封印しようって、思ってた。






……思っていたのに。











まだ全然諦められそうにないや。






初恋とはなんと面倒臭い感情だろうか。









重すぎて私には似合わないと思うんだけど。














……これも全部、島津くんのせい。
















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