島津くんしっかりしてください
学校への帰り際にスーパーによって、ジュースを数本購入した。









島津くんとの時間が、少しずつ、溶けていく。










時間よ止まれ、なんて、非現実的なことは望まない。









……ただ、少しでも、この時間が長く続けばいい。








ただ、それだけ。
























……と、隣を歩く足音がぴたりと止んで。






見れば、島津くんは数歩後ろの方で、立ち止まっていた。






荷物が重くて疲れたのかと思ったけど、どうやら違うらしい。









島津くんは、驚いたような顔で、前を見ていた。


















「……鞠姉?」



「え?」





鞠亜さん?









ぽつりと投下された呟きに思わず困惑する。









鞠亜さんが、どうしたんだろうか。










浮かんだ疑問を解決するために、島津くんの視線をなぞる。
















「……―っ」









そこには、鞠亜さんがいた。









ふわふわとした、柔らかなミルクティーベージュ。









ぷっくりとした愛らしい唇を微笑ませて。
















……頬を赤く染めて、『男性』を、見上げていた。









別に、大したことではない。












ただ鞠亜さんが男性と話しているだけだと、言われたらそうだ。









……だけど、その表情が、嫌というほど感情を表していて。
























『愛しい』という感情を、胸が痛くなるほどダイレクトに感じた。















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