島津くんしっかりしてください
……怖くて、島津くんの顔が見れない。









なにせ、小さな頃からずっと好きで、一途に思ってきた相手だ。










そんな相手が、自分以外の相手に感情を抱いていたら?











長く思い続けていた分だけ、その事実は重くのしかかってくるだろう。
















「……はやく、行こ」



「ぇ……」








低く呟いて足早にその場を去る島津くん。









慌ててその後ろを追う。











「し、っ島津くん……」



「……」




「島津く……!」




「…………」




「島津くんっ!」









前の方に回り込んで、その肩をゆすった。











島津くんの瞳は暗く沈んでいて、声をかけると弱々しい光が奥の方でちらついた。














「ぁ……っご、ごめん……」



「……ううん」







ごめん、なんて。




謝罪が聞きたいわけじゃない。







島津くんが私を助けてくれたように、今度は私が島津くんの力になりたい。








だけど、大丈夫?なんて、容易に聞けるわけがなくて。







だって、絶対に大丈夫なわけないのだから。








何を言えば島津くんのためになる?









私が、鞠亜さんの傷を塞ぐことなんてできる?









私は島津くんにとってそれほど価値のある人間なのか。









……私は、島津くんのために何ができる?









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