島津くんしっかりしてください
思考を巡らせるけど、答えは出てこなくて。







そんなうちに、島津くんははぁーっと息を吐いて、ゆるゆるとしゃがみ込んだ。











「……真見さん、知ってた?」




「……ううん、今日、初めて知った」









横に振ると、島津くんはくしゃりと顔をしかめながらも、苦しげに笑った。









「俺も、知らなかった。考えてみたら、鞠姉に好きな人がいないって、確信はなかったのに」




「…………」








「……あぁ、違うか。俺……」









目を伏せて、力の抜けた声。









「俺……ずっと、知らないふりしてたんだなぁ……」



「……島津、くん……」









その肩が震えているのを見て、そっと横に並んでしゃがみ込んだ。







すると肩にぱん、と頭を擦り付けてくる島津くん。










……撫でろ、ってことかな。










恐る恐ると言った様子でダークブラウンの髪に指を通す。









柔らかくて、すこし癖のある猫っ毛。










それを梳きながら、ぼんやりと考えた。










今、一番島津くんの近くにいるのは、私なのに。










島津くんの心の中心に居るのは、私じゃない。











わかっていたことのはず、なのに。











その事実を改めて、眼下に突き付けられた気分だ。











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