島津くんしっかりしてください
「鞠姉……」



「えっ⁉ 何⁉」




「真見さんがいない……」






「ヒョエッ……」









ピシりと固まって、あたりの様子を伺う鞠姉。







一気に血の気が引いていく。






「ま、まままさか……ここには美少女を狙う幽霊が……? それで誠ちゃんが神隠しにあったの……?」




「いや、まさか」









たかが学校の出し物であるお化け屋敷にそんな曰くがあってたまるか。








でも、鞠姉は俺の話なんてまったく耳に入っていないらしい。









「ま……誠ちゃああん! 今お姉さんが見つけ出して助けてあげるからねぇえええええ!」




「待って待って待って。力強っ……ちょ……待って⁉」









真っ青な顔で俺の腕をしっかりとキープしたまま、動き出そうとする鞠姉。









ずりずりと引きずられそうになるのを必死でこらえた。







「鞠姉! ここ暗いし、とりあえずお化け屋敷から出よう? もしかしたらはぐれて、真見さん教室の外に出てるかもしれないし」




「うう”う”……陽く”ん……」







ぷるぷるって……怪力なことを覗いたら子ウサギみたいだな。









「鞠姉、歩けそう?」



「む、無理ぃ……助けてええ……陽くん……」









上目遣いに俺を見上げる鞠姉。









縋りつくように腕にしなだれかかられて、ドキリとする前に、脳裏に青がちらついた。






視界いっぱいに広がる青い瞳が、こちらをじっと見つめていた。









……どうして、こんな時まで。






今までこんなこと、なかったのに。
















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