島津くんしっかりしてください
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〈誠side〉

「っ……ぅ、はっ」







暗幕で区切られた暗がりの中、口に添えられた手をぺりっと剥がし、背後を振り返る。









「は、離してください、鹿島先輩!」



「……あは」








軽い調子の声色。







「すげー、なんで俺ってわかったの?」



「雰囲気です」



「すごいな。忍者かよ」






私に目隠しをしていたのは、予想通り鹿島先輩。






からからと笑い声をあげて頭の後ろに手を持っていく。






髪は普段の輝きを消して暗く影を落としていた。









「どうして先輩がこんなところにいるんですか?」



「だってここ俺のクラスの教室だよ~? いるに決まってるじゃん?」




「……」






なるほど。







ここ、先輩のクラスの出し物だったのか。






納得して黙り込む私に私に、先輩は笑顔のまま手を伸ばして。










ぐい、ぐい、と上から圧力をかけてきた。










「てか、誠ちゃんはなーにしてるのかな~? 2人の邪魔して~」




「う……」




「応援するんじゃなかったの~?」




「ぐ……」










ぐにーぐにー





容赦なくかけられる重力に、反論できずに言い篭った。









「……邪魔するつもりは、微塵もないです」



「じゃあ何もせず見守ってあげないと、いつまでも距離感近くて二人の間に割って入るとかやめてね」





「……」










それは、心外だ。






そんなつもりがないのは勿論だし、何よりも。






「……そんなの、先輩に言われたくないです」







低く声を絞り出すと、先輩は首を傾げる。










「どういう意味?」




「……っ私、知ってるんですよ」









言っちゃダメ。





絶対に言わない方がいいのに、私は止まることが出来なかった。






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