島津くんしっかりしてください
「幸せでいてくれたら、それでいい? 本当に? 本当は自分の手で幸せにしたいって……思ってるんじゃないの?」




「っ……そんな、ことは」








そんなことは、ない。






考えたこともない。








本当だ。







本当に、そんなことは望んでいない。











私の望みは島津くんが幸せでいること。






だって島津くんは私の恩人で、大切だって、思わせてくれる人で……。










だから、だから。











島津くんを笑わせる人は、私じゃなくていい。








島津くんを幸せにできる人は鞠亜さんで、私じゃなくて。



















だから――……




















……本当に、そうなの?







心臓が早鐘のように、警告音のように、どくどくと血液を巡らせる。







混乱しているようで、冷静で。






脳はぐちゃぐちゃのようで、妙に冷静だった。









鞠亜さんは、鹿島先輩のことが好きで。










島津くんの事が、好きなわけでは、ない。
















…………やめろ。


















これ以上、考えると、危険だ。









スッと、血の気の引いた私の頬を撫でる、細い指。









それは異常に冷たくて、一切の熱を感じなかった。
















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