島津くんしっかりしてください
「せんぱ……」






声をかけようとした時、出口から島津くんと鞠亜さんの姿が見えて、慌てて伸ばした手をひっこめる。






島津くんは数回ぱちぱちと目を瞬かせた後、神妙な顔で首を傾げた。











「……どうして、2人が一緒にいるの?」







そんな風に問いかけられて、即座に返答する。










「お化け屋敷の中で迷っちゃって、そしたら先輩が助けてくれたの」





「そ。そゆこと~」





「へぇ……」










島津くんは、鞠亜さんの好きな人が鹿島先輩だと、気が付いていないはず。










知らなくていい。







これまでも、これからも。







ばらすつもりはないから。










「……真見さん。そろそろ休憩終わりだし、教室もどろっか」



「あぁ……うん、そうだね」







……?










島津くんに、少しの違和感。










「あ、ちょ……っ鞠亜さん、今日はありがとうございました! 鹿島先輩もっ」










スタスタと足早に歩き始める島津くんの後を追いつつ、2人に頭を下げた。







なお、島津くんは歩みを止めない。










「ちょっと、島津くん……! どうかしたの?」



「……」




「鞠亜さんと……何か、あった?」







恐る恐る、と言った様子で聞くと、島津くんはゆるゆるとこちらを振り返った。









真っ直ぐな視線に撃ち抜かれて、戸惑う。









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