島津くんしっかりしてください
……しっかりしろ、俺。









ぱん、と顔を叩き、勢いをつけて一思いに立ち上がった。








「……よし、」






真見さん、……行ってきます。







ゴロ……









重く錆びついた扉が、地面と擦れて振動を伝えた。










鞠姉は、屋上にいた。









声をかけようとして、目を見開く。
















柔らかく、自由で、のびのびとした歌声。










時に激しく、時に緩やかと。









まるで風のような声が耳の中でクリアに響いて、呆然と立ち尽くすことしかできない。










鞠姉は、夕暮れの空を見上げていた。








ぼんやりと、無表情のようで、輝く双眸はひどく雄弁で。








秋天に染められた艶やかな瞳が、なんとも魅力的だった。








ふわりふわりと、髪が風に弄ばれてひらめく。











その光景はどこか浮世離れしていて、……それでいて、痛いほど現実的だった。









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