島津くんしっかりしてください
「それじゃあ帰るよ」



「はーい。ようへ―お兄ちゃん、ばいばーい!」



「……あのさ、真見さん」



「……何」






おずおずと口を開いた島津くん。






その後に続く言葉を警戒してしまって、つい声が冷たく、鋭く響く。







「その……真見さんのバイトが終わるまで、琴音ちゃんをうちで預かったらだめかな?」




「……は?」






なにそれ、そんなの……。







「そんなの、いいわけないでしょ。私と島津くんって仲がいいわけじゃないし、そもそも島津くんの独断でそんなこと決めて、ご家族に迷惑かけるってわからないの?」



「でも……」






島津くんが戸惑ったように眼を瞬く。






わかってる、島津くんはただの親切心で言ってくれたのだろう。






もしも私が小説の主人公だったのならありがとうって素直に受け取って、かわいらしく甘えることができた。






それなのに現実世界の私はそんなにかわいらしい性格をしていない。






……わかってる。

こんな過剰に反応してしまった私の方が悪いって。






それでも、私は怒りを抑えられなかった。







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