島津くんしっかりしてください
「怪我しちゃって、泣いちゃって……それで、よく私が絆創膏とかあげてて」





「……恥ずかしいから、忘れてよ」








正直、その頃の記憶は黒歴史でしかない。










いつも泣いてばかりで、みっともないったらありゃしないから。









そっぽを向く俺に、鞠姉はまた一つ笑顔を落として。










「忘れないよ……」






小さく呟いた。






「忘れないよ。絆創膏を貼ったり、傷口をハンカチで拭ったり、そのくらいしかできなかったのに、それまで泣いてた陽くんが笑顔になって、私にありがとうって、言ってくれるの。嬉しくて」




「鞠姉……」




「私が看護師を目指すようになったの、それがきっかけ」






「……っ」







囁くような、柔らかい発声。








嬉しくて、……泣きそうになって、ただ唇を噛み締めた。








憧れの鞠姉からそんなことを言われるなんて……昔の自分、よくやった。








なんて、評価を一変するくらいには、嬉しくて。







ほんと、泣きそう。









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