島津くんしっかりしてください
********************






〈陽平side〉






……どれほど時間が経っただろうか。









鞠姉は、何も言わない。







ただ、傷ついたような顔をして、こちらを見つめていた。













「……」



「…………」







どうして、そんな顔をするの。








俺が好きだって言ったことが、そんなに嫌だった?






迷惑だった?












「……嬉しいよ、陽くん。ありがとう」










言葉を選ぶような、弱々しくぼやけた口調。













その次に続く言葉が想像できてしまって、ゆるゆると目を閉じた。











覚悟は、できていた。
















「……でも、ごめんね。私、好きな人がいるの」




「……そっか」













知ってたよ。








それでも、ずっと好きでいたから。












どうしても伝えたかった。










これは俺の我儘だ。












「ずっと……ずっと、好きだったよ」









微笑みかけると、ますます表情を硬くする鞠姉。










最初は、俺を振ったことに対する罪悪感とか、そういうものかと思った。









……だけど、違ったらしい。








鞠姉は、迷ったように視線を地面に這わせ、ふ、と息を吐いた。











それからふるりと唇を震わせて、こちらを見つめた。
















< 228 / 372 >

この作品をシェア

pagetop