島津くんしっかりしてください
スマホに落とされていた視線がちらりとこちらに向けられて、言い淀む。








「そんなに熱い視線を向けられたら流石の俺でも照れちゃうなー?」




「……熱い視線? 冷めた視線の間違いでは」




「うわー寒い寒い。凍っちゃう~」









……つかみどころのない、どこかふわふわとして、上滑りした発言。







その瞳に、あの時のような熱は微塵も感じられない。










文化祭の――優しく、傷口を覆うように抱きしめてくれた時の――暖かい体温の記憶。










それは幻か、妄想か何かだったのだろうか。









そう思えるほどに、鹿島先輩は何もなかったかのようにふるまう。










……忘れろって、ことかな。








そんな意図を感じて、口を閉ざした。









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