島津くんしっかりしてください
「……あれ、誠ちゃん? どーしたの、こんなところで?」



「鹿島先輩……」









つ、と細められた、垂れた黒い瞳に、ぱちぱちと瞬きをして固まってしまう。











「えっと、持久走の授業をしていて。走り終わったので水分補給でもしようかと……」



「あー体育か。今日全学年合同練習日だしねー」









納得したようにうなずく先輩。






私はなんとなく気まずくてゆるゆると視線を宙に彷徨わせた。






給水機に待ってきていた空のペットボトルをセットして、水を入れる。






それから足早にその場を去ろうとすると先輩は、ははって、さも楽しそうに笑う。











「そんなに硬くならなくても。誠ちゃんわかりやすくなったねぇ、陽平の影響?」



「んな……っ⁉」









茶化すような視線に思わず体の中心が熱を持った。








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