島津くんしっかりしてください
先輩はもう一度にこっと笑顔を浮かべて、それから私の頭を撫でた。









「それじゃあね、誠ちゃん」



「……さようなら」









その瞬間。





先輩の瞳と目が合って、時が止まったかのような感覚を味わう。

















濡れて少し重くなった黒髪がさらりと肩から滑り落ちる。










先輩の黒い瞳がふる、と揺れて。






映り込んだ私の青が反響する。














不思議とその瞳から目が離せなくなって、ほぅ、と息を吐いた。










先輩がくるりと踵を返してグランドの方向へ歩いていくのを、ただじっと見ていた。









垂れた瞳、いつだって三日月を描く形の良い唇。









……黒い、瞳。
















『まこちゃんとこの人、すごく似てるね』














なぜか琴音の声が耳の奥に響いた気がした。









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