島津くんしっかりしてください
「え、ちょ……ち、近……っ」




「……」





「恥ずかしいから離れて……⁉」






「……人のこと無視しておいて、言うこと聞いてもらえるとでも?」






「あ、う……………」














怒気をはらむ私の言葉に、頬を染めたままおろおろと視線を泳がせる島津くん。













その仕草や表情はとてもかわいくて、胸にこみ上げるものがあったけど、そんなので私の怒りは収まらない。






















「……島津くんが、私に隠しごとできると思ってるの?」




「……っ」










大きく見開かれた透明な瞳に、私の姿が映り込む。























……これは、好きな人に向ける顔じゃないな。














こんな状況なのに、そんなことが脳裏をチラついた。

















例えるなら……そう、般若だ。







般若のお面によく似た表情を私はしている。












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