島津くんしっかりしてください
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「はーい、ちょっとぴりっとするよ~。我慢してね」



「子供じゃないんですから……」









つんと鼻をつく薬品の匂い。






保健室に着くなり、靴下を脱ぐように指示した先輩は、洗浄綿に消毒液をしみこませる。








まずは血の滲む擦り傷をなんとかしようと、消毒液を片手に先輩は笑った。










宣言通り、じわりと傷口に痛みが広がる。










ぴりぴりとしびれるような、慣れない痛みに顔を顰めると、先輩はほら言った通りだとでも言いたげに笑みを深くした。









「そういえばさ、誠ちゃん」




「はい?」




「また陽平のこと振り回してるの?」




「え?」






……また?




またも何も……振り回してるつもりなんてないんですけど。







いぶかしむように眉を寄せると、先輩はへえ?と片方の眉を上げて、意地悪そうな顔をする。






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