島津くんしっかりしてください
かろうじて聞き取れた単語の中には、おいしい、という言葉がしっかりとあった。






えーと……まぁ、まずくなかったならよかった、かな?






「お口に合ったなら、よかったです」






やっとのことでそう答えると、洋子さんは興奮冷めやらぬ様子で声を震わせた。






「お口に合うってレベルじゃないよ! もう、美味しすぎて心臓撃ち抜かれたよ⁉ いやー、胃袋を掴まれるってこういうことを言うんだね!!!!!!」



お、おう……。すごい勢いだ。






でも、褒めてもらえたのは素直に嬉しい。






大袈裟すぎる気がするけど。






「えへへ~! まこちゃんのハンバーグはせかいいちおいしいからね~!」




何故か自慢げに胸を張る琴音。






「琴音、世界一はだいぶ言い過ぎ」



「いやいや、そのくらいおいしいよ。本当に」



島津くんももぐもぐと頬張り、キラキラと瞳を輝かせる。






「はは……きっと素材が良かったからだよ」




これは謙遜じゃない。






うちでいつも使っているお肉では普通こんなに柔らかくジューシーにはならない。






そもそもの素材が良かったら、どう調理してもまずくはならないだろう。






それなのにみんな私を買いかぶりすぎだ。






それでも、褒められたことは少し嬉しくて、口元が緩むのを隠すように食事を続ける。





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