島津くんしっかりしてください
「待って、まだ話は終わってないよ」



「……終わりましたよ。遊びに来てほしい洋子さんと、行きたくない私。そもそもの意見が真反対なのに。話し合いが終わるわけがない。ずっと平行線を辿るだけです」



「……私が意見を変えると言ったら?」



「え?」






洋子さんのまっすぐな視線に射抜かれて、目を見開く。






「私が、誠ちゃんを住み込みの『家政婦』として『雇う』と言ったらどうする?」



「っ⁉」






何を、言っているんだ……この人は?






「そんなの……っ」



「私、何か変な事言った?」



「へ。変ですよ。変すぎですよ!」



「なんで? 誠ちゃん、利益っていう言い訳が必要なんでしょ?」



「言い訳って……」





「私は誠ちゃんと琴音ちゃんに家にいてほしい、誠ちゃんは利益もないのにそんなことはできない。私がお金を払って誠ちゃんと琴音ちゃんの時間を買えば、誠ちゃんの考えを汲みつつ、私の望みも、すべて叶う。そうじゃない?」




「っ……!」






淡々と追い詰められているような感覚。






先ほどまでにこにこと明るく、楽しそうに話していた人と、今私を追い詰める人とが全く似使わない。







獲物を狙うハンターのように油断ならない瞳と、妖艶ささえ含む赤い唇に、ぞくりと意識を刈り取られる。


反論しなければいけないのに。その気すら起こらないほどの猛攻だ。






もう……どうやって反論すれば?



今まで私はなんて言ってたんだっけ?








私は……何で反対していたんだっけ?









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