島津くんしっかりしてください
「私が誠ちゃんに頼みたいのは家事全部じゃない。ご飯の準備だけ。それ以外は自由にこの家で暮らしてくれたらいいから」



「え……そんなの、」






家政婦として雇うには、仕事が少なすぎる。






目を見開いた私に洋子さんは眉を下げてヘラりと笑う。






「私実は研究職でさーちょーっとこれから忙しくなりそうなのよ。夜も帰るの遅くなりそうで」





「研究職⁉」








え、エリートやないですか……。






まさかさっきの鋭い眼光は研究するときの真剣モードの表れだったりして。






「遅く帰ってから夜ご飯作るのめんどくさいじゃん? なんならあんまり帰れなくなると思うし。でもねーこの子ほんっとに不器用で料理なんてさせたらキッチンが血みどろになる未来が見えるのよ」






そんな大げさな……とは言い切れないな。






なにせ不器用をこじらせすぎて無口なクール王子様キャラが定着してた人だからな……。






表情には出さず、心の中で失笑する。





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