島津くんしっかりしてください
「あんのババア……面倒だからって家の食糧持ってくか、普通……」



「大丈夫だよ、島津くん。私今から買ってくるからさ」






不機嫌さをあらわにする島津くんの肩をポンっと叩くと、島津くんは「え」とこちらを振り返る。








油の切れたロボットのようにギ、ギ、ギとぎこちないその仕草に、きょとんと眼を瞬かせた。






「今から買いに行くの?」



「? うん。だって買いに行かないと今日のご飯作れないし」



「……一人で?」



「うん」






表情を曇らせた島津くんに首を傾げる。






何がいいたいんだろう?






なかなか的を得ない質問の数々。






島津くんは何やら言いたげだけど、このまま言葉を待っていたら夕食が遅くなってしまう。






「それじゃあ、行ってくるね」



「あっ……」






そう言って、上着を羽織ろうとした手を、琴音がきゅっと握る。






「まこちゃん、もうおそと暗いし、ひとりで行くのあぶないよ」



「え? でもバイトとかもっと遅い時間までやってるし」



「でもじゃないでしょー? ここは自分のおうちじゃないし、道とかもあんまり慣れてないでしょお?」




「まぁ、確かに……?」






いくら保育園の近くとはいえ、ここは住宅街。


道が入り組んでいて、少し覚えづらかった。






< 65 / 372 >

この作品をシェア

pagetop