島津くんしっかりしてください
ぽたぽたと艶やかな黒髪から水滴が垂れていて、お風呂を上がってすぐに来たんだということがわかる。







「……ちょっと待って、真見さん。髪の毛乾かしてないの?」



「え?……うん、だって人様のもの勝手に使うの抵抗あるし」







不思議そうな顔でこくりと頷く真見さん。








「だめだよ! 風邪ひくよ?」



「風邪……? 大丈夫だよ。別にひいても死なないし」



「死……⁉ 命がかかってないと乾かさないの……⁉」






真見さん自分に対して関心なさすぎでは……。






仕方ないので洗面台からドライヤーを持ってきて、真見さんをベッドにもたれさせて座らせる。









「……島津くん、何してるの?」



「真見さんが乾かさないなら、代わりに俺が乾かす」



「え?」






真見さんは目を丸くして、ベッドに座る俺を見つめる。






「さっ。前向いて」



「ぇ……あ、はい」






半ば強引にドライヤーのスイッチをオンにする。






真見さんの髪を梳くようにして髪を乾かしていく。






ベッドに座る俺の足の間にちょこんと腰を下ろす真見さん。





温風を当てるたびに黒髪からシャンプーの香りがして、ごくんと生唾を飲み込んだ。







自分から言い出したことだけど……俺、だいぶ変な行動してないか⁉




真見さんにこいつ何言ってんだとか思われたらどうしよう。



とかいう不安を消すために、あわあわと真見さんに話かけてみる。






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