島津くんしっかりしてください
「島津くん。どうかした?」







訝しむように眉をひそめて、首を傾げる真見さん。






その拍子に髪がさらりとなびいて、あたりにシャンプーのいい香りが漂った。






「あ、いや……はいっ、髪乾かし終わったよ」



「あぁ、うん。ありがとう」






真見さんは立ち上がり、自分の髪を触って、ふっと息を吐いた。






「……もっと、雑に扱ってもらってよかったのに」



「え?」



「私、自分の髪嫌いだから」






そう言ってのけた真見さん。






俺がぱちぱちと数回瞬きをし、それから首を傾げた。






「なんで?」



「……何でもないよ。気にしないで」






ふいっと顔を背けて、真見さんが地面を見つめた。






「どうして嫌いなの?」



「……色も、髪質も、全部」







ポツリと呟く真見さん。






俺は手を伸ばして、髪を手で優しく梳いた。






「でも、俺は好きだけどな」



「え?」





「髪ってさ、人によって全然違うじゃん。この髪色も、この艶も、全部真見さんだけのものだし、何より綺麗じゃん」




「……」






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