島津くんしっかりしてください
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「あっ、誠ちゃーん!」



「え……あ、鞠亜さん」






翌日、食材の買い出しにスーパーに行った帰りの事。






明るい声で話しかけられて振り返ると、そこには柔らかな笑みを浮かべる鞠亜さんがいた。






ふんわりと優しそうな外見と相反する強さで手をぎゅうっと握りしめられる。





柔らかなはちみつ色の瞳に、私の姿が映り込んだ。






「会いたかったよ~! えへへ、今日もかわいいねぇ」



「あはは……私も会いたかったです」






見た目に寄らず握力強いなこの人……。




おっとりとした大人しそうな見た目に反してパワフルなお姉さんだ。






そんなことを内心考えながら苦笑いを返すと、途端に瞳が輝きを増す。






「え、ほんと⁉ ほんとに会いたがってくれてたの―⁉」




「は、はい。本当です」




「わーい! 誠ちゃんにそう思われてたなんて嬉しすぎるー! なんなら忘れられてたらどうしようかと思ってたよー!」



「あは……忘れるわけないですよ」






忘れられるわけがない。



忘れるには印象的過ぎる。






何なら毎日のように鞠亜さんの話してますし。






でも流石にそんなこと言えなくて、曖昧な笑顔で返した。






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