死に戻り皇帝の契約妃〜契約妃の筈が溺愛されてます!?〜
「どうしたの、ロキ?」
ミーナ様の言葉にハッとする。
いつの間にか思い出に浸ってしまっていたようだ。まだ、完全に平和が訪れたとも限らないのに――――そう思うけれど、今があまりにも幸せで。ついつい気が緩んでしまう。
あれから色んなことがあった。
ミーナ様が毒に倒れ、主を亡き者にせんとする陰謀を暴き、ようやく訪れた平穏な日々。
結果、俺は主の側近へと返り咲くことになった。
誰よりも主の側に居られること。主のために働けることがこの上なく嬉しく、光栄に思っている。
「失礼しました。少しだけ、以前のことを思い出していたのです」
問いかけに応えながら、俺は微笑む。
今はミーナ様を貴石宮へとお連れしている。忙しい合間を縫ってでもミーナ様に会いたいという、主の希望を叶えるためだ。
「少し前――――って、どうせアーネスト様のことでしょう? ロキはアーネスト様のことばかりだもの」
そう言ってミーナ様はクスクス笑う。俺は静かに目を細めた。
(ミーナ様は知らないのだろう)
俺にとってミーナ様は、主と同じかそれ以上に大事な存在になっていること。
主の想いは俺の想い。同調してしまうのはある意味仕方のないことだ。
「お腹――――大分大きくなられましたね?」
「うん。この中に二人も赤ちゃんが居るなんて、未だに信じられないけど」
そう言って、ミーナ様は愛し気にお腹を撫でる。
事件から数か月後、ミーナ様は主の子を身籠られた。医師の見立てでは、子は一人ではなく二人居るらしく、皆が誕生を心待ちにしている。
もちろん、俺もその内の一人だ。
妊婦というのはじっとしていれば良いというものでもないらしく、こうして貴石宮へ日参することも、出産に向けた大切な準備だ。もちろん、目的の内の九割は、お二人が互いに会いたがっているからなのだけれど。
「まだ一度も動いたことが無いのよ? そろそろ胎動を感じる頃だって聞いたんだけど。ロキも触ってみる?」
「良いのですか?」
促されるまま、恐る恐る手を伸ばしてみる。それから、ミーナ様のお腹に手を当てたその瞬間
「「!」」
ポコッと、泡が弾けるような感覚がした。
「動いた! 今、動いたよね?」
ミーナ様が瞳を輝かせる。俺は大きく頷いた。
「すごいわ! 赤ちゃんはきっと、ロキのことが好きなのよ。やっぱり親子って似るものなのね」
無邪気な笑顔。あまりにも愛らしく、思わず抱き締めたくなるような衝動に駆られる。
「――――楽しそうだね?」
けれどその時、背後から主の声が聞こえてきて、俺は反射的にその場に跪いた。
「アーネスト様! 実は今、赤ちゃんが動いたんです!」
俺の頭上でミーナ様が笑う。
「良かったね、ミーナ」
主はそう口にし、俺へとそっと目配せをする。困ったような、呆れたような、そんな表情だ。
(分かっていますよ)
心の中で呟きながら、俺は真っ直ぐに主を見上げる。
かつての俺にとっては、主がこの世の全てだった。
けれど、大切なものは少しずつ、少しずつ増えていく。
ミーナ様が笑えば主は笑う。主が笑えばミーナ様も笑う。
お二人が仲睦まじくあればあるほど、幸せはどんどん増えていく。そのことが、俺は堪らなく嬉しくて。幸せで。
そんな穏やかな日々が一生続いて欲しい――――そのためなら、俺は何でもするつもりだ。
抱き合い、微笑み合う二人を前に、俺は満面の笑みを浮かべるのだった。
ミーナ様の言葉にハッとする。
いつの間にか思い出に浸ってしまっていたようだ。まだ、完全に平和が訪れたとも限らないのに――――そう思うけれど、今があまりにも幸せで。ついつい気が緩んでしまう。
あれから色んなことがあった。
ミーナ様が毒に倒れ、主を亡き者にせんとする陰謀を暴き、ようやく訪れた平穏な日々。
結果、俺は主の側近へと返り咲くことになった。
誰よりも主の側に居られること。主のために働けることがこの上なく嬉しく、光栄に思っている。
「失礼しました。少しだけ、以前のことを思い出していたのです」
問いかけに応えながら、俺は微笑む。
今はミーナ様を貴石宮へとお連れしている。忙しい合間を縫ってでもミーナ様に会いたいという、主の希望を叶えるためだ。
「少し前――――って、どうせアーネスト様のことでしょう? ロキはアーネスト様のことばかりだもの」
そう言ってミーナ様はクスクス笑う。俺は静かに目を細めた。
(ミーナ様は知らないのだろう)
俺にとってミーナ様は、主と同じかそれ以上に大事な存在になっていること。
主の想いは俺の想い。同調してしまうのはある意味仕方のないことだ。
「お腹――――大分大きくなられましたね?」
「うん。この中に二人も赤ちゃんが居るなんて、未だに信じられないけど」
そう言って、ミーナ様は愛し気にお腹を撫でる。
事件から数か月後、ミーナ様は主の子を身籠られた。医師の見立てでは、子は一人ではなく二人居るらしく、皆が誕生を心待ちにしている。
もちろん、俺もその内の一人だ。
妊婦というのはじっとしていれば良いというものでもないらしく、こうして貴石宮へ日参することも、出産に向けた大切な準備だ。もちろん、目的の内の九割は、お二人が互いに会いたがっているからなのだけれど。
「まだ一度も動いたことが無いのよ? そろそろ胎動を感じる頃だって聞いたんだけど。ロキも触ってみる?」
「良いのですか?」
促されるまま、恐る恐る手を伸ばしてみる。それから、ミーナ様のお腹に手を当てたその瞬間
「「!」」
ポコッと、泡が弾けるような感覚がした。
「動いた! 今、動いたよね?」
ミーナ様が瞳を輝かせる。俺は大きく頷いた。
「すごいわ! 赤ちゃんはきっと、ロキのことが好きなのよ。やっぱり親子って似るものなのね」
無邪気な笑顔。あまりにも愛らしく、思わず抱き締めたくなるような衝動に駆られる。
「――――楽しそうだね?」
けれどその時、背後から主の声が聞こえてきて、俺は反射的にその場に跪いた。
「アーネスト様! 実は今、赤ちゃんが動いたんです!」
俺の頭上でミーナ様が笑う。
「良かったね、ミーナ」
主はそう口にし、俺へとそっと目配せをする。困ったような、呆れたような、そんな表情だ。
(分かっていますよ)
心の中で呟きながら、俺は真っ直ぐに主を見上げる。
かつての俺にとっては、主がこの世の全てだった。
けれど、大切なものは少しずつ、少しずつ増えていく。
ミーナ様が笑えば主は笑う。主が笑えばミーナ様も笑う。
お二人が仲睦まじくあればあるほど、幸せはどんどん増えていく。そのことが、俺は堪らなく嬉しくて。幸せで。
そんな穏やかな日々が一生続いて欲しい――――そのためなら、俺は何でもするつもりだ。
抱き合い、微笑み合う二人を前に、俺は満面の笑みを浮かべるのだった。