私の彼氏はクラスで一番、
私が自分の発言に狼狽えていると、阿久津くんが呻くように何事かを呟く。
私はそっと彼の顔を覗き込んで、つい、思ったことをそのまま口にしてしまった。
「ま、真っ赤……」
耳の縁まで、鮮やかに染まっていた。ちょっと心配なくらいに。
「そりゃ、赤くもなるでしょうが。好きな子に口説かれたら」
「くど……!?」
「これ以上俺を惚れさせて、どうしたいのかな、ほんとに」
眦を赤らめたまま、ムスッとした阿久津くんが私の鼻を摘む。不意打ちの攻撃に、ふぎゃ、と情けない声を出すと、満足そうな顔で阿久津くんが離れていった。
「ま、イケメンな山本に免じて今回は許しましょう」
許された……や、やっぱり怒ってたんだ。
はは、とやや口元を引き攣らせながら笑うと、ふいに真剣な眼差しに貫かれる。
突如、阿久津くんの纏う雰囲気が変わった気がして息を呑むと、艶やかな唇が、かすかに震えて。
「あんまり、鈴原と仲良くしないで」
懇願するような囁きが、空気を揺らした。
鈴原理久(すずはらりく)くん。
今回の席替えで、隣の席になった男の子。
鈴原、という苗字はこの学年に一人しかいないから、阿久津くんが示したのは彼のことで間違いない。