私の彼氏はクラスで一番、
でも、どうして……。
「おはよー」
悩むように視線を机へと落とした時、カラッと明るい挨拶が頭上で弾けた。
続いて、「はよー」という里香ちゃんの声。ハッとして顔を上げると。
「はよ、山本」
ぱちん、と焦げ茶色の瞳と目が合って。
そのまま白い歯を見せてはにかんだ男の子に、鈴原くん、と私は彼を呼んだ。
「……俺の顔、なんかついてる?」
挨拶を返すでもなく、名前を呼んで目を丸くするばかりの私に、リュックを下ろした鈴原くんが首を傾げる。
まさか、今ちょうどあなたの事を考えていたからびっくりしちゃって、なんて言えるわけもなく、私は曖昧に笑った。
「ううん。おはよう」
「うん、おはよ。あ、そうだ」
ふと、何かを思い出したように声を上げた鈴原くんが、リュックからコンビニの袋を取り出す。
「これ、山本が食べたがってたやつ」
そんな言葉と共に袋の中から現れたのは、期間限定のチョコレート菓子だった。
「えっ! いいの?」
「俺も食べたかったから。峯岸もどーぞ」
「気が利くじゃん」
それは確かに、少し前に三人で雑談してたときに、気になってるんだよねえ、とぽろっと零したお菓子だった。
それをまさか、覚えててくれたなんて。自分でも忘れていたくらいなのに。