私の彼氏はクラスで一番、
10月、ふわふわ誕生日。


あと数日の我慢。

阿久津くんはそう言っていたし、私もそうだと思っていた。

でも……。


「山本、今日の昼終わりにノート提出しにいこ」


横から声をかけられて、私は黒板消しを動かしていた手を止めて隣を見上げた。

視線の先では鈴原くんも黒板消しを片手に、黒板の上の方を手際よく消してくれている。

私の視線に気が付いた鈴原くんがこちらに視線を合わせて微笑む。

私は、僅かに戸惑いながら目を伏せた。


「うん……あの、でも、一人でも平気だよ?」

「なんで? 日直なんだから二人で行こうよ」


至極まともなことを言われて言葉に詰まる。

それはそう。そうなんだけど。


「でもほら、まだ病み上がりだし……」


ちらり、つい先日まで包帯に埋もれていた右足を見る。鈴原くんはきょとんと私の視線を追うと、笑って右足を上げた。


「もう平気だって! 昨日から部活にも復帰してるし」

「そ、そっか」


そう言われてしまうともう何も言えない。



< 121 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop