私の彼氏はクラスで一番、
10月、ふわふわ誕生日。
あと数日の我慢。
阿久津くんはそう言っていたし、私もそうだと思っていた。
でも……。
「山本、今日の昼終わりにノート提出しにいこ」
横から声をかけられて、私は黒板消しを動かしていた手を止めて隣を見上げた。
視線の先では鈴原くんも黒板消しを片手に、黒板の上の方を手際よく消してくれている。
私の視線に気が付いた鈴原くんがこちらに視線を合わせて微笑む。
私は、僅かに戸惑いながら目を伏せた。
「うん……あの、でも、一人でも平気だよ?」
「なんで? 日直なんだから二人で行こうよ」
至極まともなことを言われて言葉に詰まる。
それはそう。そうなんだけど。
「でもほら、まだ病み上がりだし……」
ちらり、つい先日まで包帯に埋もれていた右足を見る。鈴原くんはきょとんと私の視線を追うと、笑って右足を上げた。
「もう平気だって! 昨日から部活にも復帰してるし」
「そ、そっか」
そう言われてしまうともう何も言えない。