私の彼氏はクラスで一番、
暫くしたら落ち着いたのか、私が送る冷風に気持ちよさそうに目を細めながら、里香ちゃんがこちらを見上げた。
「あ〜、極楽」
「極楽って」
「朝から靴の中まで濡れて最悪だったけど、七葉の顔みてたら癒されたわ」
なあにそれ、と笑う。
その時、ガラッとドアが開く音がして、しゃぼん玉がぱちぱちと弾けるようにざわめきが増した。
私の席は、入口から真反対の窓際。
明るく色づくような空気に誘われ、無意識のうちにざわめきへと視線を流すと、一人の男の子が沢山の人に囲まれていた。
「よー、結……って、びしょ濡れじゃん!」
「うわほんとだ。傘ささなかったの? ワイルドすぎん?」
ピアス穴ばちばち、制服もなんだかお洒落に着崩したイケイケな男の子たちに話しかけられているのは、同じくらい……いや、その中でも一際垢抜けている背の高い男の子。
濡れたはちみつ色の髪は、いつもより重たくなって彼の小さな顔を隠している。