私の彼氏はクラスで一番、


「阿久津くん……?」


恐る恐る呼ぶと、阿久津くんはそのまましゃがみ込んだ。後ろは、振り向けなかった。


「このまま、抱きしめてもいいっすか」


ぼそ、と耳元で囁かれる。吹きかかる吐息が擽ったくて肩が跳ねてしまった。


「うう……」

「はは、唸ってる」


阿久津くんは、いつでもこうやって私の意思確認をしてくれる。

そういうところも優しいなあと思うのだけど、この時ばかりはもう訊かずに抱きしめて欲しかった……って、何を考えてるの私は!


突然抱き締められたりしたら、それはそれで絶対パニックになるくせに、改めて確認されると恥ずかしさでどうにかなってしまいそう、なんてただのワガママだ。


「お、お手柔らかに……お願い、します」


やっとの思いでそれだけ絞り出すと、すぐにお腹の辺りに腕が回ってくる。左右には阿久津くんの長い脚が放り出されて、私の体は阿久津くんの脚の間にすっぽりと収まってしまった。


< 30 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop