私の彼氏はクラスで一番、
「じょうろならもう準備してあるから」
「えっ」
「こっち」
ぱちぱちと瞬く私の手首を、阿久津くんが掴む。
「……俺、楽しみにしてたんだから」
重なり合う体温の熱さにどぎまぎしていると、拗ねたような声が落ちてきて。
サボるわけないだろ。呟かれた言葉は小さかったけれど、はっきりと聞こえた。
ぱっと顔を上げる。阿久津くんは、こっちを向いてくれなかった。
けれど、はちみつ色をした絹のような髪の隙間から覗く耳の縁が、ほんのりと赤く染まっていて。
きゅん、と胸の奥が甘く疼く音がした。
水やり当番と言っても毎日活動が必要なわけじゃ無い。
花壇に植えられているのはどれも夏の日差しに強い種類ばかりで、顧問の先生も様子を見てくれているから、委員としての活動は週に二日くらいで問題ないのだ。
夕方、長くても一時間。その時間が、気が付けば阿久津くんとの大事な時間になっていた。
「……山本」
「うん?」
水やりが終わり、ぷちぷちと細かい雑草を抜く作業に集中していると、ふと隣で同じように草むしりをしていた阿久津くんに声を掛けられる。